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指先が写っていなければ、これが全部1/6の小さい鉄製ミニチュアとは思えないでしょう。
私が真鍮原型で参加したアクアポリスの1/6シリーズでも、南部十四年式の小さな原型を真鍮
ではなく、’鉄’で作ってしまった人が五藤さんです。
その前には、鉄素材のチーフスペシャル、PPK、ガバメントなど1/6スケールの単品作品をほと
んど極限と思える緻密さで作られていますが、卓越した細部の加工技術と作品へのこだわりは 驚くばかりです。
「私のこだわりは、鉄製で、可能な限り構造やギミックを取り入れる。6分の1サイズに自分自身
どれだけ思いを込められるかと言う事です。」と語る五藤氏ですが、さらに恐るべきは・・・。
大掛かりな工作機械を使わず、ヤスリやリューターなど、ほとんど手持ちの道具を使って硬い
鉄素材から1/6ミニチュアを作り上げてしまう事です。始めた物は決してギブアップせず、時間 の許す限り、ひたすら作り続けるという集中力で作品に挑み、完成して手を止めるまでに
ガバメントでは4ヶ月、モーゼルに至っては6ヶ月もの月日を費やしています。
これらはすべて鉄製の一品物で、肉厚が薄いパーツを含むため、鋳造用の原型には適しませ
んが、アクアポリス製1/6イングラムの時には、鋳造用の原型を真鍮で作られています。
五藤氏は日本の刀剣や大工道具一式なども1/6スケールで製作されており、それらの精緻な
作品は、これまでに製作されたミニチュアガンとともに氏のサイトで紹介されています。
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左上の写真に、SAAが上から順に1/3、1/4、1/6と並んでいますが、中央は旧PWSの中園氏
が製作した銀製、下が御子柴氏の原型をもとに作られたアクアポリス製のピューターモデルで す。一番上で1/3のSAAが大変美しい輝きを見せていますね。これを旧PWS製のキットパーツ から丹念に仕上げたフィニッシュの名人が飯沼氏です。
部品を調整して組み上げ、研磨仕上げによって美しく完成させる、並々ならぬ技術の持ち主で
す。 しかし、ただのフィニッシャーではありません。
彼は錫合金、いわゆるピューター、の細部再現性に注目し、1/6サイズの人形の手に金属製ミ
ニチュアガンを持たせようと考え、SAAに続く1/6シリーズを立ち上げたアクアポリスの主宰者 でもあるのです。
大場原型の1/6ガバメントモデルは、当初は人形用として作られたギミックの少ないピューター
製のモデルでした。 その後はピューターよりも硬い真鍮、さらには925銀のモデルへと進化し て、トリガーとハンマーが連動し、極小のダミー弾をマガジンに装填して排莢ができるまでのも のになリました。
右上にあるシリンダーをはずしたSAAは、何分の1のスケールに見えますか?
あえて手を写さずに撮ったので、一見すると左側の写真の上にある1/3モデルのように見える
かもしれませんが、これは三つ並んだ一番下にある1/6の御子柴モデルが原型です。
それに飯沼氏が手を加えて、トリガーとハンマーが連動するモデルにして、真鍮で新しく鋳造し
直した物です。 このSAAも現在では925銀製で作られています。アクアポリス製の1/6モデル は、これからさらに進化するでしょう。
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精密な金属製ミニチュアカーのプロモデラーでもある加納英明氏が、デリンジャーのミニチュア
製作に惹かれたのは、組み立てキットを発表する何年も前からだそうで、1/3原型を作り上げ る前には、もっと小さいスケールの真鍮製デリンジャーも試作的に作っています。
左上の写真で加納氏の手に乗ったデリンジャーの大は1/3。一番下にあるのは1/7.5で人差し
指の上に乗るほど小さいものですが、シルバー仕上げで、バレルのロックもあり、2個のダミー カートリッジが入り、ハンマーも動かせるなどの、ギミックが組み込まれています。
左上写真の中央は1/4スケールの実験的な試作バレルの部分のみ。 最終的に、1/3スケー
ルの製作に着手し、1年以上の期間をかけて、優雅な外観と、特有の構造を持つつデリンジャ ーを細部まで再現して、クオリティの高いフルメカニズムのモデルを作られています。
1/3の加納原型は、後に真鍮製の組立てキットや925銀製の完成品として商品化されており、
猟銃彫刻家である井浦勝雄氏の手によるエングレーブモデルなども試作されています。その他 に金で鋳造した完成品も、少数ながら作られています。
加納氏はガンスモークというブランドで銀製の組立てキットを製作し、アクアポリスが925銀製の
完成品を製作するというスタンスで、1/3デリンジャーの製品がお客様に販売された時期もあり ましたが、現在では、加納氏自身が、完成品も作られています。
組み立てキットの箱絵や組立説明書にはたくさんの良質なイラストが使われていますが、これ
らはどれも、キット製作者である加納氏が自分で描いたものです。
( ガンスモーク製の真鍮製組立てキットは、2011年9月現在、全て完売しています。)
石原英明氏は、ネービーブルー(Navy Blue)という試作工房を持ち、小さな工作品を、図面の
要求通りに高い精度で正確に作り上げる、精密加工の技術屋さんです。
かつては日本にひとつしか無いミニチュアガン専門のHPだったピーナッツ工房(旧PWS)から発
表された、石原氏の真鍮製コルトガバメントに驚かされた人は多いでしょう。 それは実物の詳 細図面を忠実に1/3で再現し、完全な切削加工で作られた最高級のミニチュアモデルでした。
その後、石原氏は、さらに1/3スケールのルガーP-08、ワルサーP-38・・・と切削完成品の製作
を続け、それを原型とした鋳造品の組み立てキットも加わって、石原作品はミニチュアガンを 愛好する人々の期待を集めたのです。
しかし2003年の12月には、ピーナッツ工房を運営する中園氏がHPを閉じて製作活動を停止し
石原氏もまた、ミニチュアガンの世界から離れました。
そして今・・・。石原氏は再びハイグレードなミニチュアガンの製作に取り組んでいます。
写真の左下と中央上は、2005年の10月に氏から送られてきた再開第1作目の1/3 PPKです。
このPPKは、ホビーフィックス社さんとの提携によって、企画が実現したもので、石原氏はホビ
ーフィックス社さんからPPK(Interarms製)の図面を提供されていますが、その図面はオリジナ ルのものではなく、実物のPPKを三次元計測して作成したものとの事です。
何が凄いかと言えば、先ずはミニチュアガンにこだわらないレパートリーの広さです。
ビンテージバイク、戦車、日本刀・・・と何でもミニチュアにしてしまう技術力は
真似が出来ません。建設機械からトラクターまで意欲を見せる御子柴氏にとって
ミニチュアガンは膨大な作品群のひとつに過ぎないのでしょうか。
なのにクラシックリボルバー、火縄銃、ライフル、サブマシンガンと、多種多様のミニチュアガン
を、まるで飴細工でも作るかのよう・・・と言いたくなるほどの巧みさ、速さで生み出します。
1/3,1/4,1/6。一品物で真鍮製の美しい作品群ですが必ずしもフル可動にはこだわりません。
「かえってアマチュアのほうが凝った物は作れると思う。時間を掛けて限りなく細部を作りこむこ
とができるから・・・。私にとってプロとは、時間の計算ができること。」と笑う御子柴氏の言葉 に、手の遅い私は反論ができません。
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1974年の創業以来35年にわたって、ロストワックス製法による真鍮精密鋳造ひとすじに活動し
て来たマイクロキャスト社を代表する人物が西澤洋治氏です。
その西澤社長が、製造係長の赤崎政文さんとともに示してくれる探究心と技術力のおかげで、
メカニズムを動かすミニチュアガンが原型の細部まで忠実に再現され、高精度でバリの無い、 素晴らしい鋳造部品が大場工房に提供されているのです。
東京銀座の天賞堂をはじめ多くの一流鉄道模型会社を主な得意先とする独自の技術は国内
屈指です。専門家の人たちには良く知られているため、あえて自らの技術を宣伝する必要は 全くなかったのでしょう。 当時は、ネットで検索しても会社の所在地が発見できませんでした。
真のスペシャリストとはそういうものかもしれません。 しかし、現在は一般の方からの問合せ
も受けられるように、ウェブサイトを立ち上げています。
それにしても、受注額の1パーセントにも満たないであろうミニチュアガンの鋳造を西澤氏が笑
顔で引き受けてくれたのは驚きです。ひょっとして銃の事に詳しいのですか・・・?
「いや詳しくないからいいのです。知らないほうがどの部分も逃さず再現しようとするから・・・。」
と笑う西澤氏。
「初めてのものに挑戦することがとても面白いのです。顔では笑っていましたが、その後はどう
すればいいか、ひたすら考え続けました。 最善案が浮かぶまでは絶対に手をつけません。
頭の中で段取りを何度も試行錯誤します。食事、お風呂、トイレ・・・。そんな時もです」
その西澤氏は、ミニチュアガンを真鍮ばかりでなく、銀でも鋳造出来るように、2005年8月には
銀専用の小型溶解炉を導入して、新しいミニチュア作品への道を大きく開いてくれました。
HP用の撮影をお願いしたら、はにかんで、赤崎さん(係長)の奥に逃げられてしまいましたが
実績を誇る精密鋳造会社の長として製品に厳しく、同時に心優しい、最高の技術者なのです。
2012年の2月より、西澤洋治氏はマイクロキャスト社の会長に就任され、玉田 聡(たまだ さとし)
氏が社長として新たに就任されています。
現在、同社の社員は8名。その精鋭スタッフを束ねる現社長の玉田氏と赤崎係長のお2人は
鋳造世界の技を極めた達人であり、 会長の西澤洋治氏と共に「すごい人々」なのです。
プロの革職人は世の中にたくさんいるかもしれませんが、ひたすら本格的なホルスターとベル
トを専門に、何十年もお客様の注文品を作り続けている革職人といえば、日本では、スピード (SPEED)の小見山氏をおいて他にはいないでしょう。
自分の好みや体型に合わせて本革製のカスタム品を作って欲しいというお客様のために
長い間、ホルスターを手作りしてきた数少ない専門家です。
TVの「太陽にほえろ」や「あぶない刑事」など、あるいは劇場映画に登場する主役俳優の専用
ホルスターもたくさん作っていますが、その結果、映画の主人公と全く同じ物を作って欲しいと 言う注文が入ることも多いとか・・・。
中には、官給品の代わりにSPEED製のホルスターを愛用している本当の刑事さんもいると聞
いています。
そういうわけで、小見山氏は1/1の、あるいは実用の本革製ホルスターのベテラン職人であり
本業はミニチュア作家ではありません。 本業で使う工業用ミシンなどの道具類や革素材、金 具類などは、スケールの小さなミニチュア作りには使えないため、友人としてのお付き合いは 長いものの、これまではミニチュアのホルスターを作っていただく機会がありませんでした。
写真中央のSAA用ホルスターは、パックルやカートリッジなど金属部品の製作をアクアポリス
の飯沼氏が分担することで初めて実現した本格的な1/6スケールのオールドタイプガンベルト で小見山氏が一品ずつ丹念に手で仕上げたものです。
左下の1/3デリンジャー用は、小さなホルスター全体に細かなバスケット模様が打刻され、丁寧
に作りこまれた試作品です。
実物のホルスターを知り尽くした革職人だから作れる「本物」のミニチュアホルスター・・・。
これを機に、ミニチュア作りの仲間としても、匠の技を発揮してもらいたいと願っています。
ミニチュア用の特注ホルスターについては工房でもご相談のメールをお受けします。
実用的なホルスターやベルト類は、電話にて、SPEEDの小見山氏に直接お問合せ下さい。
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